小説家の伊坂幸太郎さんの作品のアウトプット第四弾。
初期代表作の『アヒルと鴨のコインロッカー』を読みました。
10年ぶり以上に読んだ本作の感想などをまとめます!
物語のあらすじ
大学入学に伴い仙台のアパートに引っ越してきた椎名。
同じアパートに住む河崎から「一緒に本屋を襲わないか」と変な勧誘を受け、断るつもりだったのが何故か彼の話に巻き込まれていき、気が付いたら彼と本屋へ向かっていた。
その一方、2年前の仙台ではペット殺しの騒動が起こっていた。
ペットショップで働く琴美、ブータン人のドルシ、琴美の元恋人の河崎は偶然からこの騒動に巻き込まれていく。
2つの物語が同時に進行していき、隠された真実が明らかになっていく。
読んだ感想
伊坂さんの他の作品と比較して、個人的にそこまで面白くは無かったかなというのが率直な感想でした。
現在と二年前の物語がどんどん進行していき、先が気になるような構成になっているのはさすが伊坂さんだと思わせられます。
また、各章の冒頭と最後の文章がだいたい一致するというところもかなり手を込んでいます。
しかし、それらの要素を持っていても個人的にそこまで…と思っていて、その理由としては他の伊坂作品と比較して、
- 結末があまり好きではないこと
- 全体的に文章が長く感じたこと
の2点があります。
結末について
モヤモヤする終わり方でした。
他の伊坂作品は終盤に至るまでは絶望的な展開が続いたとしても、最後は勧善懲悪だったり、後味が悪くはない終わり方をすることが多いですが、本作においてはあまりそのように感じませんでした。
2つの物語は椎名と琴美の視点で進んで行きますが、椎名視点では彼は蚊帳の外で気付かないうちに物語が全て完結してしまっています。
琴美は最終的には死んでしまいますし、この死に方もペット殺しのグループに完全に一矢報いたとは言えず、一人生き残らせてしまったことが椎名視点の物語が始まるきっかけとなってしまっています。
しかもこの生き残りの一人が作中で明確に罰せられる描写があるわけでなく、気付いたら痛い目にあっていて、衰弱していることしか分からないという展開で終わります。あれだけペットや琴美を傷つけ、読者に不快感を与えた人物が衰弱レベルで済むのは、他の伊坂作品と比較すると結構優しい終わり方だなと思ってしまいます。
河崎は最後のメッセージがあったからやや前向きな終わり方を迎えたようにも感じますが、自殺に至ったのは自業自得のようなところもあるので何とも言えないです。
ドルジが自首しに行ったのは当たり前と言えば当たり前なのですが、これが起因してか作中最後の椎名の挨拶は出来ずに終わってしまうこととなります。(これは意図してこのような終わり方にしたようにも見えますが)
これらの要素を複合的に考えると、なんだかモヤモヤしてしまいます。
文章について
当たり前ですが、文章についてはここ最近の作品と比べて若さがあるというか、回りくどさが目立つように感じました。
その回りくどさも伊坂さん作品の見応えの一つです。
ですが、近年の作品に慣れてしまうと「そこまで言わなくていいような?」と思う瞬間がいくつもありました。
少し話が逸れますが、この作品を読んだ後に『マリアビートル』を読んだのですが、本作で抱いた違和感を『マリアビートル』では抱かなかったので、やはり本作は若さが目立った作品なのかな?とちょっと思っています。
まとめ
あくまで個人的にですが、近年の伊坂作品と比べるとそこまで面白さを感じなかったです。
もちろん、読んで面白かった!とは思いました。
100点満点で評価をすると本作は120点くらいはあります。
しかし、他の伊坂作品は200点くらいを平気で超えてくるような面白さがあります。
繰り返しますが、他の伊坂作品と比べるとあまり面白くないと感じるだけで、十分他の人に勧められる作品ではあります。
映画や舞台化もされている伊坂さんの代表作の1つでもありますので、興味のある方はぜひ読んでみてください!